MENU

きわめて明快、「日本」がわかりたければ、真っ先に読め!忘れているやつはもう一度読め!大ロングセラー『タテ社会の人間関係』(中根千枝 講談社新書 1967)

 2024年で130刷、まだまだ現役である。この本も、一度は手に取った記憶がある人が多いだろう。筆者もそうである。書かれている内容は、「日本は、体育会系などに代表されるタテの人間関係が基本的な構造である。例えば、欧米では「先輩」「後輩」にあたる言葉がないだとか」といった程度の認識ですませてはいないだろうか?年功序列があたりまえだったころの理論で、いまさら読む気にならないよ、もしそういいたいのだったら、あらためて読み直してほしい。いまなお新鮮で、いまだに売れ続けている理由がわかるはずだ。一度読んだことのある本を読み直して、新たな発見をするというのは、老いた脳のリハビリには、かなり効果的なような気がする。しかも分厚くないうえに、論旨がきわめて明快、楽に読み通せる。

 もうひとつ、この本には「タテ社会」という用語は登場しない。中根千枝が2019年に出した『タテ社会と現代日本』(講談社新書 50年ぶりの続編)の中で、はっきりと書いている。本のタイトルは編集担当者が決めたと。ただし「タテ組織」という用語は登場する。中根千枝の「タテ社会論」は、『タテ社会の人間関係』(1967)『タテ社会の力学』(1978 講談社学術文庫)『タテ社会と現代日本』(2019)の三冊でひとかたまりとなっていのるので、併読しなければならない。読むとわかるが、中根の提示した日本社会の組織論は、自民党などの政党、官庁、学界、古くからある大企業等では、いまだに十分あてはまるようにみうけられる。むしろ、日本がこれからも「日本」でありつづけるならば、中根の「タテ社会論」は生き続けていくだろう。いや、天皇を頂点にいただく日本という社会を理解する上で必読の書籍であるといえる。そして、土居健郎の「甘え」、山本七平の「空気」などの概念との親和性もあり、まことに切れ味鋭い刃物のような概念となっている。中根には『適応の条件』(講談社新書 1972 45刷 2023)があり、この本は、『甘えの構造』と中身がよく呼応し合うので、併読をすすめる。

 中根の「タテ社会論」の出発点は、1964年に中央公論に掲載された「日本的社会構造の発見」である。これは、『タテ社会と現代日本』に収録されているので、まずここから読み始めるとよいと思う。中根の理論を誤読しやすいポイントとして、「場」と「資格」という用語がある。A社という会社がある。このA社というのが「場」である。そして、「社長」「課長」「社員」あるいは、「営業」「事務」「警備」などが「資格」である。

 日本の場合、「場」の方が「資格」よりも重視される。中根の例を引用すると、「××テレビの者です」というので、てっきりプロデューサーかディレクターと思ったら、運転者だったということがあったそうだ。そして、この「場」における最も重要なルールが、「入社順で序列がきまる」ということである。そして、この序列は絶対で、上の意向に下は従うというルールである。これがピタリとあてはまるのが、「体育会系」とよばれる組織であろうか。また、上の者の心得として、忠実なる下の者には、愛情をもって接することが肝要である。このあたりの分析が、下の者は上の意向(空気)を読むことが大事だったり、上下の間に「甘え」が生じたりということがおこるのである。

 では、この日本と大きく異なる社会とはどのようなものがあるのか?日本が「タテ組織」ならば、「ヨコ組織」の例はといわれて、あげているのが、イギリスとインドである。イギリスは階級、インドはカーストに代表されるヨコの社会構造があるというわけだ。

 インドのカースト制について、中根は『適応の条件』のなかで、わかりやすい例をあげている。一般に工場では、機械とともに一日の作業を終えたあと、日本人ならば、機械に感謝の意味も込めて、きれいに掃除する。このあたりまえのことを、よくいうことをきくインド人に同じようにやれというと、激しく抵抗する。掃除は、別のカーストの仕事だからである。このインド人の抵抗する気持ちを、中根は日本人ならば、自分の知悉している分野で後輩のいうことをきけといわれたのと同じだと述べている。

 日本の場合、「場」がかわれば、一旦すべてリセットされる。ヨコ社会では、「資格」は一生ついてまわるから、「場」がかわっても大きな変化はおきない。

 次回は、中根の「タテ社会論」への批判について述べてみたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

今年70歳になります。ようやく、読書中心の生活に入れます。まずは、日本のロングセラーを読破します。3000冊はあくまで目安です。

コメント

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次